ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)マーケットと成果の成長が著しい。
日経コンピュータ2019/10/31号でレポート記事が掲載されていた。
私はどちらかと言うとRPAを導入する立場よりも基幹系システム開発を担当する立場にある。
情報システム部門の立場の人達に近い偏見になってしまうかもしれないのでご容赦頂きたい。
最近思うのはRPAが導入されてしまったせいでシステム改修にかかるコストや期間が伸びてしまっていると感じるのだ。
目次【本記事の内容】
- 1.RPA道入による課題
- 1-1.オープンAPIはまだメンテンナンスしやすい
- 1-2.人手不足でRPA導入が進むのは自然な流れ
- 1-3.削減時間だけで、導入成果を測ることなかれ
- 2.RPA導入でいいなと思ったケース
- 2-1.紙→OCR→データ化→システム投入
- 2-2.ユーザー部門主体で進められる
- 2-3.業務プロセスの見直しが行われる
- 3.まとめ
RPA道入による課題
オープンAPIはまだメンテンナンスしやすい
私が携わっていた案件ではRPAよりもオープンAPIを活用することが先に始まった。
社内外の別のシステムからAPIを使うことでGUIを使わなくても、私が担当していた基幹システムへのアクセスができるようになる。
スマホアプリ、コールセンターシステム、別会社が提供するサービスに情報を掲載する。
APIだからシステム改修をするときにもいつまでに回収するからということでアナウンスを出せるし、
もし、相手方から改修が間に合わないのでと言われれば現行バージョンと新バージョンのAPIを同時に提供することもできる。
その分運用コストはかかってしまうのだが、APIのソースは基幹システムのソースとして管理されているのでGREPすることもできるしドキュメント化もされている。
人手不足でRPA導入が進むのは自然な流れ
でも、APIだとシステム部門が関わらないとビジネス部門だけで対応することができない。
APIを提供する側も使う側も。
ビジネス部門の人がIT部門に相談したら、
「対応できるのは半年後ですね」
そんな事を言われたら、ビジネス部門の人は
「最近どうやらRPAというものがあって、それほどプログラムがわからなくてもシステムを自動化できるツールが有るらしい」
と聞けば気になるだろう。IT部門の私も気になるが。
IT部門のマネージャ層だって、開発できる人から今は手がいっぱいなので
「対応できるのは3ヶ月後ですね」
って言われているわけで、それをそのままビジネス部門に伝えるとリスクをプラスαして半年後って伝えるわけで。
そんなのまっとれんわ。
というわけでRPAの導入が始まる。
削減時間だけで、導入成果を測ることなかれ
サービスサイトを少し改修したのだけど、最近強烈なカウンターパンチを食らったのが、そのせいでコールセンターにクレームの電話があった。
何でもRPAでサイトの情報を読み込んでいたのが止まってしまったらしい。
流石にそんなところまでは面倒見られない。RPA使う側でシステム変更のリスクを考えて、画面や読み込んでいるファイルレイアウトが予期せず変わったらどうするかリスク計画を立てておく必要があると思うんだ。
IT部門でも基幹系システム、顧客管理システム、コールセンター、意思決定システム・・・。いろんな社内システムをRPAでとりあえず自動化するとその時には生産性が上がるのだろう。
でもいざシステム改修をしようとした時に蜘蛛の糸が絡まったようにシステム同士が密に連携しているため、影響調査に時間がかかったり、リリース後のトラブルに遭遇するリスクが高くなったりする恐れがあるんじゃないか?
システム作る時にまず習うのはモジュール結合度は疎結合にしろということだ。
それはシステム間でも同じ。
だから別システムから基幹システムのDBを直接参照させないようにする。
ファイル連携やAPI連携でシステム内部の挙動は見せないようにする。
基幹システムを改修しても外部システムに渡すファイルレイアウトやAPIを変更しないように注意さえすればいい。
だから変化に強いシステムにすることができる。
それが、いろんな画面からRPAつかって別システムと繋がりだしたら疎結合ではなくなってしまう。
ITに関わるコストって所有する将来かかるであろうトータルコストで考えないといけないというのは以前から有る考え。
削減時間ばかりが注目されているのが気になるところだ。
RPA導入でいいなと思ったケース
紙→OCR→データ化→システム投入
日経コンピュータ2019/10/31号の特集で、OCRで紙のデータを読み込んでシステムに登録するという事例が載っていた。
インプットとなるのは紙だからシステム化されていない。
ユーザーがふだん紙を見ながらシステムに手入力しているのを自動化するのだから、上で書いたようなシステム間結合の問題も発生しない。
ユーザーは楽になるし、システムメンテナンスにも影響及ぼさないのだからメリットしか無いように思える。
ただ、私の周辺ではそれほど紙を扱う業務がないので、とりあえず武器として自分のひみつ道具にしておこう。
ユーザー部門主体で進められる
同じ特集でRPA活用に積極的な企業ほどユーザー部門主導で導入が進んでいるという結果が出ていた。
なんでそういうことになるのだろうか?
これは私の推測だが、
step
1IT部門は既存システムのメンテナンスで忙しい。
step
2RPAだったらユーザー部門だけでなんとかなりそう
step
3頑張って自動化。これならいけるじゃん!もっと他にも活用しよう
やっぱりビジネスセンスがある人がITを武器にできると生産性が上がるんだなというのが数字で見えているのがエキサイトする。
業務プロセスの見直しが行われる
RPA導入企業の多くで業務プロセスの見直しが行われていることもアンケート結果から明らかになった。
IT部門は忙しいのでビジネス部門だけで業務プロセス改革。既存システムを使えないところをRPAで自動化。
RPAのほうが開発スピードが高そうだから、これで業務プロセスが改善できたら、あとから基幹システムを直してPRAのプロセスを取り込むという使い方もできるだろう。
まとめ
RPA導入で効果を上げている事例が特集されていた、日経コンピュータ2019/10/31号。
確かにRPAで自動化したことにより、削減できた時間は各社かなりの見込みになるようである。
しかし、基幹システムを担当している私からすると、懸念することがある。
RPAの導入が進むとRPAに使われているシステムの改修スピードやコストが増加することだ。
特集を見ると今後、RPAの導入が右肩上がりに進むのだろうから私の懸念点が顕在化するのはもう少し先かもしれないが。