RPAが流行りに流行っている。日経コンピュータの記事でも今後取り組みのペースを加速させる企業のうち、RPAの活用を拡大する見込みの企業がほとんどだ。
-
RPAによる業務効率化が注目される一方で起きているもう一つの問題
ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)マーケットと成果の成長が著しい。 日経コンピュータ2019/10/31号でレポート記事が掲載されていた。 私はどちらかと言うとRPAを導入する立場より ...
続きを見る
ただ、心配な点がある。
今までもIT業界では流行り言葉を作ってはツールを売り込み、いつの間にか消えていった過去がある。
それと同じ過去をたどるのではないか?
そんな不安がよぎるのだが、RPAと同じようなウリ文句で隆盛を誇ったツールたちがどのような事になっているか振り返る。
そうすればRPAの未来も少しは分かるのではないだろうか。
結論からするとRPAは今後もツールとして活躍していくと思うのだ。
目次【本記事の内容】
- 1.RPAと同じようにかつて隆盛を誇ったツール達
- 1-1.Extract Transform Load(ETL)
- 1-2.Enterprise Application Integration(EAI)
- 1-3.BPR
- 2.RPAの未来
- 2-1.かつてのツールがたどった道
- 2-2.RPAはどうか?
- 2-3.RPAの本命
RPAと同じようにかつて隆盛を誇ったツール達
ETL
昔々、その昔、Extract Transform Load(略してETL)と呼ばれるツールがあった。(参照 Wikipedia)
複数のシステムからデータを抽出して加工し、加工したデータを別のシステムに投入するためのツールである。
いや、そんなのSQLで抽出してテキストファイルをロードすればいいだけじゃないの?と思った人はそのとおりだ。
しかし、ETLツールが必要だった背景には1990年代後半の混沌としたIT事情を理解しておく必要がある。
今でこそ、個人情報の管理やユーザーアカウントの管理、システムの運用管理など内部統制されているので問題はなかった。
しかし、当時はITの大航海時代。
メインフレームもあればUNIXもあれば、NetwareもあればOS/2もあればWindowsサーバーもある。
パッケージもあれば、フルスクラッチで開発したシステム、マクロ好きのユーザーが作ったEXCELブック、グループウェアのLotus Notes。
もうやりたい放題。
当時は私もETLツールのようにMS-ACCESSにメインフレームからテキストファイルを読み込んで、Notesから顧客情報を吸い出して、
事務管理部の人が作った営業成績マクロのデータをマッチングしてレポートを作るようシステムを作っていた。
SQLが分かれば良いというわけではなく、いろいろなデータフォーマットやシステムへのアクセス方法を理解してデータを統一して分析できる形に整えてあげる必要がある。
そういうニーズはあったから、私もセールスの人から話を聞いたことが有るんだけど、結局帯に短し襷に長し。
MS-Accessに取り込むほうが柔軟に対処できるなという判断をした。
システムが混沌としていたこの時代って何が起こるかと言うと、仕様どおりにデータが格納されていないことがしょっちゅうあるの。
会社が合併してデータ移行したといえば、今まで問題なかったデータ抽出のところでプログラムが落ちたりするの。
今までデータが必ず入っていたカラムにNULLが入っていたり、項目長が変わっていたり。
そういうのにいかに素早く対処できるかは結局自分の手に馴染んだツールが一番早いわけ。ETLツールを導入したプロジェクトでもシステム統合などのイベントをきっかけに使わなくなったりしたと聞いた。
ただ、ETLツールということばで久しぶりにぐぐってみたら今でもツールは売られているのね。ということは複数のシステムからデータを抽出してフォーマット変換するというニーズはまだ有るのだろう。
EAI
2000年代初頭に私も携わったのがEnterprise Application Integration(略してEAI)と呼ばれるツールがあった。(参照 Wikipedia)
2000年代に入ると金融ビッグバン、企業のM&Aが活発になった。
そうすると問題になるのはどちらのシステムを使用するかということだった。
私が担当していた顧客でも合併して規模が大きくなったが、もともと運用していたシステムを並行稼動化させていたため、なんとかこの二つのシステムを統合できないかという課題を抱えていた。
そんな時に私の上司が、営業にきた。
「ヨーロッパの子会社で開発していたEAIツールがあって、それがヨーロッパの金融機関にバカ売れしているのです。EAIツールを日本に持ってこようと思います。それを使われてはいかがですか?」
顧客も困っていたのか乗り気になって、EAIツールもどきをAccessで作っていた私が、スイス、ドイツまで出張で研修に行ってくることになった。
EAIはシステム間のインタフェースを柔軟に設計できてデータのやり取りを複数のシステム間でやり取りすることを効率化するためのシステムだ。
業界によって企業間でデータをやり取りする場合にデータのフォーマットが決まっている場合がある。私がスイス、ドイツに研修に行ったのは金融機関同士のデータのやり取りを比較的容易に実現できるEAIツールであった。
しかし、いかんせん値段が高い。確かにノンコーディングで項目マッピング定義書を書くようりょうで実装できてしまうのがすごかったのだが、企業規模が大きくないとメリットを享受できないような価格であった。
せっかくヨーロッパまで研修に行ったのに、またMS-ACCESSでEAIもどきをテコ入れするはめになった。でも確かにかかったコストは10分の1ぐらいだったので、顧客を否定できない。
BPMS
そしてシステム間連携だけじゃなくて更に一歩踏み込んでシステム内の業務プロセスも柔軟に変更しようじゃないのという思想のツールがBusiness Process Management System(BPMS)。
Bisiness Rule Managementとか方言はあるがこれも同類のものだ。
業務ルールをロジックで書くのではなく、ツール上でダイアグラムを書いて業務プロセスを組み上げていく。
そうすれば業務改善したい場合や業務プロセスの見直しをしたい場合、システムがボトルネックになってしまうことが有る。
だけどBPMSで作っていればコーディングしているわけではないので簡単に業務プロセスを見直せるというわけ。
思わずうおおおおおっと叫んだ!
コンセプトをきいて、これはプログラマ大失業時代が来るかと思ったね。
社内でセミナーがあったから聞きに行ってみたの。でも業務フロー図のボックスのプロパティにソースコードのようなものがチラチラと見えてしまったのw
って質問したら
「ええ! 書きますよ。その当たりはBPMSのツールによって癖があるので、無邪気にノンコーディングでシステム構築できるのねと思うとたいへん痛い目を見る事になります」
と社内でBPMSのツールを使った経験豊富なSEが言っていた。やっぱり銀の弾丸は無いのね。そう思っていたら以下の記事が。。
BPMS全体の信用を落としかねないような訴訟になっているではありませんか。
スクープ127億円の賠償求めるシステム裁判、三菱食品がインテックを訴えた理由
RPAの未来
かつてのツールがたどった道
BPMSはまだホットな分野だと思うのだけど、最近はELTやEAIという用語を聞くことがとんと少なくなった。
私はパッケージシステムを扱う仕事をしているのだが、パッケージがELTやEAIの領域をとり混んでいるのが原因ではないかと思っている。
実は私が扱っているパッケージにもシステム内のデータをユーザーがGUIで定義していデータを抽出する機能がある。
また、業界に特化したパッケージだと別会社と電文をやり取りするためのAPIやファイル入出力に対応してしまっているパッケージも多いだろう。
ビジネスルールにしたって業界のデファクトスタンダードをパッケージで実現する!とかベストプラクティスをパッケージ導入で実現とか綺麗事を宣伝しているが、パラメータをいじればある程度カスタマイズできてしまうわけで、BPMSの分野もパッケージが取り込んでしまうのは時間の問題かなと思っている。
RPAはどうか?
今は紙の用紙を事務員が手入力をしていたのをRPAがOCRで読み込んでテキスト化してシステムの画面に自動投入などやっているが、ERPやパッケージベンダーがそれを指くわえて見ていると思えない。
RPAの分野も自社のツールやパッケージに取り込もうとするのは自然な成り行きだろう。オープンAPIが業界で標準化されてパッケージに標準搭載されればわざわざRPAで作り込まなくてもAPIで情報のやり取りができるようになる。
今は過渡期だからRPAが必要なんだろうけど、5年後にも今ほどRPAがもてはやされているかどうか。当たり前になってしまって意識しなくなっている可能性がある。
RPAの本命
日経コンピュータの2019年10月31日号で明らかになったRPAツールのシェアだが、NTTデータさんのWinActorとUiPathが両巨塔という感じでシェアを争っている。
ただ、私は実はここに第三者が割り込もうとしていて後発でソフト出してきてシェアを一気にさらっていくマイクロソフトが動くのではないかと思っている。
どこの会社のパソコンにも入っていてビジネスパーソンなら誰でも使うExcel。まだ、機能はしょぼいけどWEBサイトのスクレイピングはできるし、PowerQueryでデータベースやテキストファイル、他のEXCELブックからデータを集めることもできる。これに他のアプリへのGUI登録機能を加えればRPAできるじゃないのと思っている。かつてロータス1-2-3やネットスケープを駆逐したように仕掛けてくるのではないかと。
って思って書いていたら今朝のニュースでマイクロソフト参入のニュースが。
[速報]マイクロソフト、RPA機能を搭載した「Power Automate」発表。ユーザーの操作を記録、再現実行で自動化。Ignite 2019
もう一日早く記事を出していれば。。。遅きに失した。
しかもExcelに追加するのではなくてFlowに追加するのね。
今のうちにFlow勉強しておくかな。RPAベンダーの人はどうやって生き残るのだろうか。
人の心配している場合じゃないけどな。w
じゃあな。