私が30歳のときだった。
それまでメンバーとして働いていたのだが、急にリーダーに抜擢されることになった。
既存システムのリプレースプロジェクトだったのだが、そのシステムには全く携わったことが無い。
しかも私は子会社に出向したばかりで、周りは知らない人ばかり。
なぜ私がリーダーに抜擢されたのかわからないが、任されたのだから一生懸命取り組もうと意気込んだ。
やる気を出して上司本なんかを読んだりした。
そんなにわか兵法なんて身につけなくてよかったのに。
200名ぐらいのプロジェクトで私を含めて社員6名、協力会社の人が30名いる。
そんな大規模チームをマネジメントした経験は皆無だ。
今だったら悪い予感しかしないのだが、恐れを知らない若さっていいね。
目次【本記事の内容】
- 1.なぜ優秀な人がリーダーになると失敗するか?
- 1-1.メンバーがどれだけのレベルか分かっていない
- 1-2.見積もりが間違っている
- 1-3.メンバーを責めてしまう
- 2.私が少しは周りが見えるようになったきっかけ
- 2-1.多面評価の結果、メンバーからテメーは糞だと言われる
- 2-2.多面評価の結果、あなたはチームワークは向かない人と罵られる
- 2-3.働けなくなったときに思い知る
- 3.まとめ
なぜ優秀な人がリーダーになると失敗するか?
メンバーがどれだけのレベルか分かっていない
全く新しい環境に放り込まれていきなりリーダーをしろなんて言われたら皆さんはどうするだろうか?
- メンバー各人と面談。職務経歴の把握。スキルレベルの把握。
- 協力会社のリーダーの人と、今までのプロジェクトの進め方の良かった点、悪かった点。
- 自己紹介。
- その環境での仕事の進め方の手順や人間関係の把握。
今だったらそのくらいのことは思いつくのだが、その当時はいっちょぶちかましたるかぁ~
というリーダーになったばかりの人に有りがちの勝ち気先行タイプで、周りから見たら、あぁ、あいつはやらかすだろうな。
と思われるテンプレ通りの事をしてしまっていた。
当然ながら上述したようなことはやらず、いや、自己紹介ぐらいはしたかな。リーダーに任命されたのでよろしく!
ぐらいは言ったと思う。
そしてプロジェクトをすすめるにつれて、
- なんでコイツらこんなに時間がかかるんだ?
- 何回言っても指摘したことが直らないのはなぜなんだ?
遅れているメンバーの仕事を横取りしてサクッと仕上げてしたり顔とか、今思えばイケてないリーダーの典型タイプでした。
orz
見積もりが間違っている
リーダーやっていると仕事の見積もり、スケジュールをすることはよくある。
メンバーに相談して決められればよいのだけど、そんな事は時間のムダって思っていた。
自分基準でこれぐらいの修正だったら1人月もあればできるよな。
そう思って引き受けた修正が全然終わらない!
2ヶ月立っても終わらない!
これはヤバイと思って協力会社の人をサポートにつけた。
そして一週間後、メンバーから言われた一言。
「せっかく付けて頂いた協力会社の人なんですが、逆に足手まといなので自分一人でやらせてもらえませんか?」
え!
もう一ヶ月以上遅れているんですけど、その自信はどこから湧いてくるの?
そう思ったが、足でまといになるというのは私も気持ちは分かったから渋々了承。
結局3ヶ月かかってその修正は終えることがデキた。
それを担当したのは、私がチームのナンバー2として将来を嘱望していたメンバーである。
他のメンバーだったらもっと時間がかかったろう。
メンバーを責めてしまう
私の悪いところは、なにか状態が悪くなった時に他責にしてしまうところだ。
自分が悪いわけじゃない。他の誰かが悪いと思ってしまうところがあった。
いや今でも、そう思ってしまうときがある。ただ、いまはブレーキが掛かり待て待てお前にも悪いところがあったのだろ。
それを直すのが一番早いだろと胸に手をあててみることができる。
しかしこの時は10年以上前の駆け出しのリーダー。
遅れたメンバーの仕事を自分が巻き取って、残業、休日出勤どんと来い!って感じで仕事をやっていた。
しかしそれでも、遅れをカバーできなかった時は上司から呼び出しをくらい、
「おいおい、遅れているじゃねえか!どうやってキャッチアップする気だよ。」
と言われ
「まあ見ててくださいよ。きっちり仕上げてやりますから」
と言ったあと、上司の言葉をそのままメンバーに伝え
「おいおい、おくれているじゃねえか!(以下略)」
といってメンバーにもムリな残業、休日出勤を強いるのである。
こんなリーダーの元だったら即転職活動だなと思えるような態度をとっていた。
実際にさきほど登場した我がチームのナンバー2の彼は転職してしまった。
え! なんで転職? その当時は自分に原因が有ることにすら気づけなかった。
私が少しは周りが見えるようになったきっかけ
多面評価の結果、メンバーからテメーは糞だと言われる
当時務めていた会社では上司は部下を査定するが、部下は無記名で上司を評価するというシステムがあった。
これを多面評価といってその時期がくると上司たちはビクビクしだすのである。
私はリーダーになって初めて多面評価を受けるので、それがどんな内容かしらなかった。
ただ、上司と飲みに行くと
「そろそろ多面評価の時期だけど、あんまり気にしなくていいから。結構きついリプ有ると思うけど参考程度に考えとけよ」
と何度か言われるのである。
何を部長はいっているのだろうか?これほど頼もしいリーダーのもとで仕事ができるうちのメンバーは幸せものではないですか!
と自意識過剰気味に心の中で反論していた。
しかし蓋を開けてみれば
- 専制君主の暴君。まだワタミで働くほうがまし
- 自分が常に正しいと思っている。部下の意見は全く聞かない
- クソクソクソクソ! ホント糞!
(´;ω;`)
いままで一生懸命やってきたのに。なんとかチームを引っ張っていると思ったのに。
無記名だけど、当時メンバーが15人ぐらいに増えていて、15名ともそんな事書いているから無記名の意味ないんだけど?
このままじゃあ駄目だな。それから私は傾聴研修や上司本を読んだりして自省したのである。
多面評価の結果、あなたはチームワークは向かない人と罵られる
3年ぐらい経ったろうか。
毎年の多面評価で一部の人から酷評はあるものの、少しは良いコメントももらえるようになった。
自省しているつもりでも、プロジェクトの修羅場になるとどうしても本当の自分が出てしまう。
反省はしているのだけど、やっぱりチームの力を最大化するような真のリーダーシップは発揮できなかったと思う。
そんな事をメンターに相談すると、
「たぶん、チームで仕事するの向いてない正確だよw」
とアドバイスを貰う。今さら芸術家への道を歩めるだろうか。
働けなくなったときに思い知る
ある時過労がたたってしばらく会社を休んだときがあった。
そして復帰してみると、今まで見たことのないような生き生きとした顔をしてメンバーが働いているのである。
そして私がいなくても仕事が円滑に回っているのである。
私がいたときよりもプロジェクトはうまく進んでいるように見えた。
あぁ、自分がいないほうがメンバーが育つし、自主性を発揮するし、何よりみんな笑顔で楽しそうに仕事をしているのが眩しかった。
私が復帰したことでこの雰囲気を壊しちゃいけないなと思い、私は組織のマネージャをやめプロジェクトをサポートするPMO部門に移ることにした。
まとめ
リーダーになる人というのはその組織の中で優秀な成績を残してきた人だろう。
そういう人にとって自分基準で仕事をすることをメンバーに求めると、なんでこんなに時間がかかるんだ!品質が悪いんだ!と歯がゆい思いをするかもしれない。
それを直すのはどうすればよかったのか?
挫折することでしか自分の愚かさに私は気づくことができなかった。